市場について調べようとして「◯◯市場 市場規模」と検索すると、数字が書かれたページがいくつも出てきます。ただ、それぞれ数字が違う。どれを使えばいいのか分からない。よくある状況です。

数字が違うのは、どれかが間違っているからとは限りません。市場の定義、対象範囲、時点が違えば、同じ市場について異なる数値が出ます。

なお「市場調査」という言葉には、アンケートやインタビューなど、自分で新しくデータを集める調査も含まれます。専門の調査会社に依頼して実施するものや、自社で消費者に質問するものなどです。

この記事では、Web上ですでに公開されている統計・資料・レポート等を調べる方法を扱います。

市場調査では「何を知りたいか」で情報源を選ぶ

市場について調べるといっても、必要な情報は目的によって変わります。

  • 市場規模(金額ベースか数量ベースか)
  • 事業者数・参入企業数
  • 販売数量・出荷数量
  • 利用者数・普及率
  • 業界の構造(どんな種類の事業者がいるか)
  • 主要企業とその位置づけ
  • 関連する制度・規制
  • 市場の動向(伸びているか、縮んでいるか)
  • 消費者の動向

知りたいことによって、見るべき情報源は変わります。事業所数を知りたいなら政府統計、制度を知りたいなら官公庁資料、直近の動きを知りたいなら報道というように、目的に合った場所を探すほうが早く終わります。

「市場調査だから、とりあえず市場規模を検索する」から始めると、見つけた数字が何を指しているか分からないまま資料だけが増えます。

市場・業界を調べる主な情報源

情報源の種類ごとに、確認できる内容と見るべきポイントを整理します。

情報源確認できる情報の例確認するときのポイント
政府統計人口、世帯、事業所数、企業数、生産、販売、消費、雇用などの数値統計の調査対象、分類、単位、調査年
官公庁・公的機関制度、政策資料、白書、業界についての調査報告書公表日、調査を実施した時期、対象範囲
業界団体会員企業数、出荷・販売などの業界データ、業界の概況会員企業のみの集計か、業界全体を対象とした推計か
市場調査レポート市場規模、成長予測、企業別シェアなど市場の定義、対象範囲、調査方法、実績値か予測値か
企業のIR・開示資料企業から見た市場環境の説明、事業セグメント別の数値企業自身の説明であること、引用元があるか
報道機関市場での出来事、企業の動き、制度変更報道された日付、情報源が公式発表か取材か
専門メディア業界動向の解説、分析記事執筆者、公開日、記事内で示されている根拠
学術・研究機関研究結果、調査データ調査対象、調査方法、発表時点

この表は信頼度の順位ではありません。情報源にはそれぞれ得意な領域があり、調べたい内容に合っているかで選びます。制度について知りたいなら官公庁資料が適していますが、直近の企業の動きは報道のほうが早く出ます。

政府統計を探す

各府省が公表している統計は、政府統計の総合窓口(e-Stat)から検索できます。総務省が整備している政府統計のポータルサイトで、各府省が公表する統計データをまとめて検索・閲覧・ダウンロードできます。分野や組織から絞り込んで探すこともできます。

分野は、人口・世帯、労働・賃金、農林水産業、鉱工業、商業・サービス業、企業・家計・経済、住宅・土地・建設、運輸・観光、情報通信・科学技術など、幅広く分かれています。

注意したいのは、政府統計に「知りたい市場の市場規模」がそのまま載っているとは限らないことです。

公的統計は産業分類や品目分類に沿って集計されています。この分類は、ビジネスの現場で使う「市場」の区切りと一致しないことがあります。特定のサービス分野について調べたい場合、その分野だけを取り出した数値が存在しないこともあります。

統計を使うときは、統計名だけでなく次を確認してください。

確認項目見るポイント
調査対象誰を・何を対象にした調査か。全数調査か標本調査か
分類産業分類、品目分類。自分の調べたい区分と一致しているか
単位金額か数量か。円か千円か百万円か
対象地域全国か、都道府県別か、特定地域か
対象期間年度か暦年か。どの期間の数値か
調査年いつ実施された調査か。毎年実施か、数年おきか

多くの統計には調査の概要や用語の定義をまとめた資料が付いています。数値だけを取り出す前に、その統計が何を数えているのかを確認してください。

官公庁・公的機関の資料を確認する

白書、調査報告書、審議会の配布資料、政策資料などから、特定の業界についてまとまった情報が得られることがあります。制度の背景や、業界が抱える課題の整理などは、こうした資料に載っていることがあります。

ただし、公的機関の資料であれば常に最新というわけではありません。数年前に実施された調査の報告書が、そのまま公開され続けていることもあります。

確認するのは次の3点です。

  • 資料の公表日
  • 調査を実施した時期(公表日とは別)
  • 対象範囲(全国か一部地域か、どの事業者を対象としたか)

また、資料の目的が自分の調査目的と一致しているとは限りません。政策検討のために作られた資料は、その政策に関係する範囲で整理されています。自分が知りたい区分と一致しているか確認してください。

業界団体の統計・資料を確認する

業界団体が、出荷数量、販売数量、会員企業数、業界統計、市場動向などを公開していることがあります。政府統計では取れない細かい区分のデータが得られることもあり、有用な情報源です。

ここで最も重要な確認は、その数値が何を対象としているかです。

業界団体の統計は、会員企業からの報告を集計したものであることがあります。その場合、非会員の事業者は含まれません。業界団体の統計を市場全体の数値として扱えるかは、会員企業の範囲や集計対象を確認して判断する必要があります。

資料を見るときは次を確認してください。

  • 会員企業のみの集計か、非会員も含めた推計か
  • 集計対象の企業数(何社からの報告か)
  • その団体の会員が業界全体のどの程度を占めるか(記載があれば)
  • 集計方法(実数の報告か、団体による推計か)

多くの統計資料には、冒頭または末尾に集計方法の注記があります。数値だけを抜き出さず、この注記を確認してください。「本統計は会員企業◯社の報告を集計したものです」といった記載があれば、その範囲の数値として記録します。

市場調査レポートを見るときは「市場の定義」を確認する

調査会社が公表している市場調査レポートには、市場規模や成長予測が掲載されています。プレスリリースとして概要が無料公開されていることもあります。

ここでよく起きるのが、複数のレポートで市場規模の数字が違うという問題です。

説明用の例(架空の数値です)

資料A:国内◯◯市場 500億円

資料B:国内◯◯市場 700億円

同じ「国内◯◯市場」という名称でも、含めている商品・サービスの範囲が違えば数字は変わります。どちらかが間違っているとは限りません。

レポートを見るときは、市場規模の数値より先に、その市場をどう定義しているかを確認してください。多くのレポートには「本調査における◯◯市場とは」という定義の記載があります。

確認したいのは次の点です。

  • 市場に含めている商品・サービスの範囲
  • 対象地域
  • 対象期間
  • 金額ベースか数量ベースか
  • 実績値か予測値か
  • 調査方法(どのように数値を出しているか)

企業のIR・開示資料から市場情報を確認する

企業がIR資料や決算説明資料の中で、自社が属する市場について説明していることがあります。市場規模、成長率、業界動向などが図表で示されることもあります。

これらは市場の全体像をつかむ手がかりになりますが、記録するときは扱いに注意してください。

確認すべきは、その数値が外部の調査データを引用したものか、企業独自の推計かです。

引用元が記載されている場合は、可能なら元の資料まで確認してください。企業資料では要約されていたり、企業にとって説明しやすい形に切り出されていたりすることがあります。

引用元を確認できない場合は、出典不明のまま外部の公的データとして扱わず、「企業資料に掲載された数値」として情報源を明記して記録します。

個別企業のIR資料や開示情報をどう確認するかは個別企業の情報を調べる方法で扱っています。

報道・専門メディアは市場の動きを確認する

統計や調査レポートは公表までに時間がかかります。直近の動きは報道や専門メディアのほうが早く出ます。

  • 新規参入、撤退
  • 価格改定
  • 制度変更
  • 企業間の提携、統合
  • 新商品・新サービスの発表
  • 業界内で起きた出来事

報道を扱うときは、企業の公式発表と報道内容を分けて記録してください。報道記事には、企業が発表していない内容(取材で得た情報、関係者の話、記者による分析)が含まれることがあります。

専門メディアの解説記事では、事実として報じられている部分と、筆者による分析・見解の部分を区別してください。「今後◯◯が伸びる見込み」といった記述は、筆者の見方です。

市場データの数字が違うときに確認すること

複数の資料で数字が違う場合、まず定義を確認します。

  • 市場の定義(何を市場に含めているか)
  • 対象地域
  • 対象期間
  • 対象商品・サービスの範囲
  • 金額か数量か
  • 出荷額・売上・消費額など、どの段階の数値か
  • 実測値か推計値か
  • 税込か税別か(該当する場合)
  • 調査方法

定義が違えば、両方の数値が同時に成立します。「国内市場」に輸入品を含めるかどうか、サービス提供事業者の売上を見るのか最終消費者の支出を見るのか、といった違いで金額は変わります。

どれか一つを選んで記録する場合は、なぜそれを選んだかも残してください。「自社の事業範囲に定義が近いため資料Aを採用」といった記録があれば、後から見直すときに判断できます。

説明がつかないまま片方を選ぶより、両方を記録して「資料により数値が異なる」と整理するほうが、調査結果としては正確です。

古い市場データを現在の数字として使わない

市場データには必ず時点があります。

  • 調査を実施した年
  • データの対象年度
  • 資料の公表日
  • 予測値か実績値か

「2026年に公開された資料だから2026年の市場データ」とは限りません。統計や調査レポートは、実績を集計して公表するまでに時間がかかるものがあります。公表年より前の年度を対象とした数値である場合もあります。

また、予測値と実績値を同じ表に混ぜないでください。混ぜる場合は、どちらなのかが分かる形にします。「2028年◯◯億円(予測)」のように書いておけば、後から見た人が誤解しません。

市場情報を調査結果として整理する

数字だけを集めても、後から使えません。定義・対象範囲・時点・情報源をセットで残します。

調査項目数値・内容対象範囲対象時点情報源確認日
市場規模—————
事業者数—————
販売数量—————
業界動向—————
制度—————
未確認事項—————

「対象範囲」の列が特に重要です。市場規模の数値だけがあっても、それが何を含んだ数字か分からなければ判断に使えません。「国内、事業者売上ベース、◯◯を含み△△を除く」といった情報を残してください。

調査結果を整理する考え方はWebリサーチの基本的な進め方でも扱っています。

公開情報だけでは市場規模が分からない場合

探しても、目的に合った市場規模のデータが見つからないことがあります。新しい分野、区分が細かい分野、統計上の分類に当てはまらない分野などです。

この場合、「公開情報では対象市場の市場規模を直接確認できなかった」という調査結果になります。これも結果の一つです。

周辺の統計から自分で推計する方法もありますが、その場合は次を明確に分けてください。

  • 公開されている数値(出典あり)
  • 前提を置いて算出した推計値(前提の記載あり)

推計値を出典付きの数値と同じ列に並べると、後から見た人がどちらか区別できません。推計であることと、どんな前提を置いたかを併記してください。

市場・業界の調査に時間をかけられない場合

政府統計、官公庁資料、業界団体の資料、企業の開示資料、市場調査レポート、報道。市場について調べるには、複数の種類の情報源を横断することになります。それぞれ対象範囲や時点が違うため、数値を並べる前に定義を確認する作業も必要です。

optimal plan SEARCHでは、Web上の公開情報を対象とした検索・リサーチを代行しています。調査結果は情報源を明示した形でお渡しします。確認できなかった情報は「確認できなかった」とお伝えします。

市場内の個別企業を比較したい場合は、競合調査の進め方も参考にしてください。

ご相談だけでは料金はかかりません。
内容と料金をご確認いただいてから調査を開始します。